そもそも「姿勢」って なんでしょうか?
姿勢とは、「身体各部位の相対的位置関係」の事です。
頭部と体幹の位置関係・骨盤と下肢の位置関係など 身体各部位の相対的な位置関係を 合成したものが「姿勢」です。
それでは、良い姿勢と悪い姿勢の違いは なんでしょうか?
物理学(力学)で考えることができます。
基準は重心線です。
重心線に、より近い位置に各関節を配置した姿勢が、各関節の負担(関節モーメント)が小さく良い姿勢と言えます。
力学で姿勢を捉えれば あるクライアントさんの「悪い姿勢」を見た時、どの部位に負荷(負担)がかかっているのか?は容易に理論的に解ります。
姿勢を改善するという事
力学(物理学)的に、悪い姿勢から良い姿勢に相対的位置関係を誘導していく事です。
短縮している筋には ストレッチを行い、弱化している筋には 筋力強化 を行い姿勢を改善します。
ステップ1
◆カウンセリングシートとお聞きした内容から、姿勢の歪みについて推測を行います。
ステップ2
◆足裏重心点の検査
人間が両足で立っている時に、両足裏と その間の部分を合計した面積を支持基底と言います。
この面積が広いほど姿勢の安定性は高くなります。
両足を離すと、安定性が高くなるのは、この面積が広がるためです。
支持基底内の重心線の位置が支持基底の中心に近いほど安定性は高くて、重心線の位置が端に近くなる程安定性は低くなります。
そして、重心線が支持基底から出てしまうと、人間は立っていることができなくなります。
支持基底内の、どの位置に重心線があるのかを検査します。
ステップ3
◆3次元姿勢分析
支持基底内の重心線の位置が、中心にあるのか?端にあるのか?などを3次元の軸を使って決定していきます。
人体の運動は、関節を運動軸とした体の回転運動が基本的な動きです。
人体が回転運動を起こす時、支点として、あるいは中心として回る軸の事を運動軸と言います。
○重心点を相互に直交する3つの軸を設定します
垂直軸 : 回旋の歪みを評価します
矢状軸 : 左右方向への歪みを評価します
前額軸 : 前後方向への歪みを評価します
*この3軸から運動・体の歪みを考える事が姿勢分析には不可欠です。
*運動軸を中心に関節の可動域検査を行います。
◆筋肉の状態を推測する
当オフィスでは姿勢の歪みパターンを276種類に分類しています。
全てのパターンを説明していく事は難しいので、ここでは1つのパターン「骨盤の前傾(反り腰)」を例にとって詳細を説明していきます。
「骨盤前傾」の姿勢の特徴は、腰が極端に反って、ヒップアップが強く、猫背になる事が多い姿勢です。
腰椎分離すべり症の方に多い姿勢でもあります。
◆姿勢の考察は力学を基に行います
力学は物理学の1分野で、物体の運動、またそれらに働く力や相互作用を考察の対象とする学問分野です。
力の合成と分解 生体におけるテコ 重心 床反力 関節モーメントなどを基に姿勢の考察を行っています。
ステップ5
◆検査は客観性を重視しています
当オフィスでは、客観的に計測できる関節可動域(Range of joint motion) 筋由来可動域(Range of muscle length)を検査方法として採用し、筋肉の状態を判断しています。
関節可動域、筋由来可動域は角度で計測する事ができる客観性の高い数値です。
正確にテストする事ができ、誰が実施しても、ほぼ同じ数値を計測する事ができる再現性が高い検査方法です。
◆筋肉の長さを検査
姿勢状態から推測される短縮している可能性がある筋肉の長さを一つずつ検査して、実際に短縮しているかどうかを調べます。
*例:骨盤前傾で短縮している可能性がある筋肉(腸腰筋・大腿直筋など)
[筋肉の長さが短縮していると]
○酸素とエネルギーを多く消費し、多くの乳酸老廃物を含有しますので、疲れやすくなります。
○ポンプ作用が正常に作用しないため循環が悪くなります。
○骨膜、関節包、靱帯付着部を伸張して、関節の圧を増加させ、軟骨には不均衡な圧をかけます。
○筋間を走行する神経、血管を圧迫することがあります。
ステップ6
◆筋力検査
姿勢状態から推測される弱化している可能性がある筋肉の検査をします。
例: 骨盤前傾で弱化している可能性がある筋肉(大殿筋・ハムストリングス・腹直筋など)
[筋肉が弱化していると]
○関節の安定性が悪くなり、関節に不均衡な力が生じます。
○不良姿勢をもたらし、過緊張および圧迫が加わる領域を作り出します。
○筋収縮による循環が十分に機能しないために、血管系・リンパ系のポンプ作用が低下します。
◆パートナーストレッチ
検査結果に基づきパートナーストレッチを行い姿勢の改善を目指します。
写真のクライアントさん(高校生 男性)の ふくらはぎ(下腿三頭筋・アキレス腱)の負担を減らすためには、どうすればいいでしょうか?
当オフィスでは、
腹直筋・ハムストリングス(オレンジ部分)のストレッチ と
外腹斜筋・腸腰筋(水色部分)の筋力強化を行いました。
ふくらはぎとは、全く関係なさそうな部位ですが、写真のケースでは、ふくらはぎの負担は結果であって、原因ではありません。
順を追って説明させていただきます。
ステップ1
まず、姿勢を目視で観察します。
重心線(赤の縦線)より骨盤が前方に移動(青矢印)している事が解ります。
ステップ2
物理学(力学)で考察します。
足関節より、骨盤が前方に位置していますので、質量中心位置(体重と考えてください)は、足関節より前方に負荷をかけます。
足関節には赤矢印の力がかかります。
この姿勢を維持できるという事は、大きさが等しい逆方向の力(緑矢印)を身体が発生させ続けているという事になります。
この緑矢印の力が、足関節底屈(伸展)モーメントといわれる力で、この姿勢を維持する限り、ふくらはぎ(黄色部分)で発生させ続けなければならない力です。
ステップ3
ふくらはぎの負担を減らすためには、骨盤を後方へ移動させて、足関節伸展モーメントを減少させる必要があります。
骨盤前方移動の原因を筋長検査・筋力検査で一つずつ探していきます。
検査の結果
短縮筋:腹直筋・ハムストリングス
弱化筋:外腹斜筋・腸腰筋
という事が判明しました。
ステップ4
ふくらはぎの負担の原因となっている骨盤前方移動を後方へ戻していきます。
ここで、最初の「ふくらはぎの負担を減らすために 当オフィスでは、腹直筋・ハムストリングスのストレッチ と 外腹斜筋・腸腰筋の筋力強化を行いました。」 に繋がっていきます。
この姿勢改善の結果、足関節伸展モーメントが減少し、ふくらはぎの負担が減少します。
このステップが、姿勢工房が考える姿勢改善です。